不労所得とはアメリカだけのものなのか?

投資と不労所得

しかし、不労所得資本はそのようなことには何の関心も抱かないし、責任感も感じない。そ もそも不労所得資本にとっての最大の責務は、投資家へのリターンを最大にすることであり、 そのためにできるだけ「環境コスト」を支払わないように行動するのが合理的選択である。 したがって、ある国で環境規制が強化されたとしても、不労所得資本は規制を嫌ってもつと 値には何の重きも置かない.つまりは人間同士の社会的つながりなど、利益追求という大義の前 には解体されてもしょうがないという「危険思想」なのである。 現代世界には、そんな危険思想を内包する不労所得資本という怪物が地球上を自由に間歩し ているのだ。 環境破壊に寛容な国に資本を移動するのである。その結果、地球全体でみると、環境破壊はより 激しくなってしまう。

 

 

この規制と不労所得資本の「追いかけっこ」が地球環境問題の解決を遅ら その結果、京都議定書に基づく地球環境対策はあまり大きな効果を上げることができない。そ の間にも世界の森林は切り倒され続け、中国やインドなどの新興国では猛烈な経済発展の陰で、 先進国では考えられないほどの環境汚染、環境破壊が進んでいる。しかし、不労所得 という市場競争原理の前では、「環境を守ろう」という人類の生存にとってより重要と思われるス ローガンは、残念ながらほとんど政治的力を持っていないのである。

 

 

二酸化炭素の排出量規制を目的とした京都議定言に対して、アメリカや中国、インドといった 「資源消費大国」が抵抗を示しているが、その背後には「環境コスト」負担を嫌う不労所得資本の 思惑が見え隠れする。特にアメリカの政治的決定は不労所得資本のロビー活動に大きく影響さ もちろん、筆者にしても不労所得や新自由主義にも一定の意義があったことを否定 するつもりはない。 味のない公共投資に垂れ流しされることに対して、くさびを打ち込んだのは間違いのない事実で ある。まだまだ日本には改革の余地がたくさん残っていると言っても過言ではない。

 

 

しかし、これまでの路線で構造改革を続けるということであれば、今や「功」よりも「罪」のほう が大きくなってきているのではないだろうか。いや、経済学者はともかくも、少なくとも国民の 多数はそう考えはじめているようだ。 実際、○八年九月に行なわれた自民党総裁選では、小泉元首相が支持表明した小池百合子氏が 「小泉改革路線」の継承を宣言したが、国民の反応は冷たく、彼女には期待されたほどの票が集ま らなかった。ことにこれまで小泉改革を圧倒的に支持してきた地方票が小池氏に一票も入らな かったことは注目に値する。いまや自民党政権を支えてきた地方の党員でさえ、もはやこれまで と同じ構造改革路線はゴメンだと思っている何よりの証拠と言えよう(もっとも、小池氏に投票 しなかった地方の自民党員の思惑が、これ以上、既得権を奪われるのはごめんだという保守派の「揺り戻し」に基づくものならば、それはけっして褒められたものではない。

 

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地方の活性化への障 害の多くは地方に根強く残っている既得権の構造に求められるからである)。 この総裁選直後、小泉元首相が引退を宣言したが、これは彼自身もこれまでのような構造改革 路線の限界を思い知ったためであろうか。これは本人に聞いてみないと分からないが、「古い日 本を打破する」と言って始まった構造改革は、「古い日本」の悪しき側面だけを部分的に破壊する のに成功したが、しかし同時に、日本社会が持っていたよき側面すらも破壊しはじめたと言える のではないだろうか。 これら問題についてのより詳細な分析については後述するが、構造改革や規制緩和をキャッチ フレーズにして登場した新自由主義思想、そして、そのマーケット第一主義によってもたらされ た不労所得の大潮流が、日本のみならず世界中にさまざまな矛盾や深刻な問題を惹き 起こしていることは、読者も実感として感じておられることであろう。

 

 

何ごとにも「バランス」というものがある。 一九八○年前後に始まったサッチャリズムやレーガノミックスは、個人の自由を何よりも重要 視し、国家による経済活動への過度の干渉や弱者救済を目的とする手厚い福祉行政を批判するこ とで大きな支持を集め、さっそうと登場した。サッチャー英首相やレーガン米大統領の政策は、 「大きな政府」がもたらす国民負担の上昇や経済の非効率、公的部門の拡大に歯止めをかけ、たし かに経済活性化をもたらすのに役立った。しかし、かつて、「大きな政府」を支持するケインズ経 済政策が行き過ぎてしまったように、新自由主義や不労所得も明らかに行き過ぎて しまった。それがもたらす経済の急成長、富の膨張に酔いしれてしまった。それが今の格差社会、 そして金融の混乱、モラルの崩壊につながっていると言えるだろう。 いずれにしても、不労所得というモンスターの適切なる制御には相当のエネルギー が必要であり、そのために何ができるかを真剣に考えなければならない。