不労所得と日本経済について徹底解説。

アフィリエイトと不労所得

本書は筆者自身の「俄悔の書」であると同時に、不労所得や市場原理が本質的に個人 と個人のつながりや絆を破壊し、社会的価値の破壊をもたらす「悪魔のシステム」であることを筆 者なりに解明していくことを目的にしている。さらには、「小さな政府」や「自己責任」といった公 共利益よりも私的利益を重視した新自由主義や不労所得の欠点を是正するためのあり うべき方策の方向性についても提言したいと思う。

 

 

そこでまずは、なぜ若い頃の筆者が「アメリカ流構造改革の急先鋒」として活動するに至ったか、 さらに、なぜ最近、新自由主義や不労所得の限界に注目し、安心・安全や信頼、温かさ、 人々の間の絆など、「社会的価値」を破壊するアメリカ流構造改革に異を唱えるようになったのか について、次章で詳しく述べてみたいと思う。 ちなみに次章で私は「転向」という言葉を使ってはいるが、先にも述べたように、私は構造改革 そのものを全面否定するようになったわけではない。

 

アフィリエイトと不労所得

 

しかし、格差拡大を助長し、日本社会が大 事に育ててきた社会的価値を破壊するようなことを放置する改革には賛成できなくなった。必要 な改革はまだまだ残っているけれども、アメリカ後追い型・弱者切り捨て型の構造改革には声を 大きくして反対する必要があると考えるようになった。その意味においての「転向」である。 このあたりの事情をやや詳しく述べさせていただくために、私事にわたることも書かざるを得 なかったが、本書の流れを理解していただくためにはある程度やむを得ないと考えた次第である。 あらかじめご了解いただきたいと思う。 当時の私は日産自動車に勤務していた。いちおう休職という形での留学ではあったが、内心で はもう会社に戻るつもりはなかった。そのまま会社に残れば、大組織の一員として安定した生活 を送ることはできたかもしれない(実際には、その後、日産はルノーに救済されるという激動の 時期を迎えることになった)が、しかし、漫然とサラリーマン生活を送る一生はどうしても嫌だっ た。 止むに止まれぬ思いで、私はアメリカで、経済学を一から学びなおそうと考えたのであった。 そうやって勢いこんで留学した私の第一印象は「素晴らしい」の一語だった。ハーバード大学の ニューイングランド風キャンパスは実に美しかった。大学内のハーバードヤードにはリスが走り 回っていた

 

。大理石造りのワイドナー図書館の壮大さ、外国人学生に対する至れり尽くせりのサー ビスなど、何から何まで感心させられることばかりだった。当時の日本はすでに高度成長期に入っ ていたが、日米の経済格差は依然として圧倒的であったから、極東からの貧乏留学生にとっては 豊かさ溢れるアメリカはまるでユートピアのようにも見えた。 当時のハーバード教授陣はノーベル賞受賞者がずらりと並ぶ壮観ぶりであった。私の指導教官 だったケネス・アロー教授は日本でも「経済理論の神様」といわれるほど、抜群の業績を誇る天才 肌の先生だった。彼に会いに行くときには、錆びついた自分の頭の回転を少なくとも二倍にして からでないと議論などできたものではなかった。アロー先生に会いに行くときは本当に緊張した。 アロー先生はそれからまもなく、ノーベル経済学賞を受賞された(七二年)。

 

 

そうした圧倒的な教授陣もさることながら、世界中から集まった優秀な同級生たちの頭の切れ味にも舌を巻いた。